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ねるねる煉獄

自慰文らしく生きようね

四月某日 自己紹介をしていた


私が大学に入学し、あくせく苦なくも汗かいて、「人間のお友達作り」に奔走していたのが四月でした。春が来たかと思えばそれは花粉を撒き散らしただけだったりして、すごく不毛なシベリア春だったのですが、その折ある授業である課題が出ました。それは「自己紹介」を書けというもの。2000字程度で自らを説明しろと、我が大学が誇る教授殿下はおっしゃったのです。さて困りましたのは私、なぜならアイアムスケルトン。↑このようにがらんどうを極めた文は脳みそ由来です。しかし私は頑張った。そうして紹介を成し遂げた。そのような経緯+30分で書かれたファッキン文章を載せたいなと思ったから載せます。

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xxxxxxxxx   xxxx

自己紹介

私の名前はxxxxです。xxxxxxxxxxxxxxxxxxxに所属している一年生です。2000字〜20000字程度の自己紹介を課題として出されたとき、2000字の私はきっと存在しない、いるとするならばそれは何の気なしに記録した電子の海を揺蕩う呟きそれのみだと諦め、諦め、いつしか10分ほど船を漕ぎ、無意識を揺蕩っては舞い戻り、むしろ溺れていたなと笑いました。

自己紹介は難しいものだと思います。どこまでが「自己」で、どこからが「世界」なのか、自己の輪郭は不明瞭だからです。自分周辺の世界を含めて紹介するということは、しかし個人、個性を紹介する自己紹介とは外れている気がしました。背景を自己と同化させてよいのでしょうか。結論、自身の人生経験と能力と夢と希望と絶望と、それらを題材にして自分にしか書けない文章を書くということが、この場における最適解、最も自己が伝わるものと思いましたので、そういう自己紹介を行います。

私は自身の紹介をするとき、まず容姿の特徴を挙げるべきだと思っています。なぜなら一説によると印象の全ては容姿で決まるなどと被告は申しており。私の髪は茶髪です(注釈:四月段階。今やファッキンメッシュ)。これは先天的なものではなく、つい最近染色したものです。自らの染色体XYそれぞれに不満を持つ私は髪を染めずにはいられませんでした。そうして肌は人一倍白く、腹は人一倍黒く、内向的精神を外交的肉体でコーディネートした粉飾の塊こそ私です。身長は日本人平均よりいくらか小さな170cm、奇遇なことに器も日本人平均より小さいです。代わりに目はデカい。顔は各自で判断してほしいのですが、最近は「モテそう」などと言われており(注釈:四月段階。今や無い)、評価と実績が乖離しています。監査が必要です。さて、これで私の特定は容易ですきっと。授業の際、もし頭の片隅にクズ文字の断片が収まっていたらば、是非見つけてみてください。

…2000文字あればその人の人となりが詳細にわかるのではないでしょうか。というわけで、まずは思いつく限りのアイデンティティ構成要素を綴っていきます。
自らを形作った最も特異な経験といえば、それは映画研究でしょう。私は高校三年間、映画研究部に所属していました。主に撮る方の研究です。そのときの経験、感情の機微、成長失敗活動実態etcをいちいち綴っていたら終着駅が行方不明、機体はバミューダ海域へ突入した。のですごい部分をすごくいいます。NHK主催全国高校放送コンテストというビッグタイトルにおいて私が監督・脚本・主演を務めたものが優勝してしまいました。あと何回か監督をしたもので賞を頂くなどしました。もうただの自慢なのですが、これらの賞、或いはそこに至る経験や人間関係が自分の人生を唯一承認してくれるので、これらは自己を語る上で外せません。

というか映画が好きです。高校三年生くらいから、映画をちぎっては投げ、ちぎっては投げ、限定フィルムめっちゃ貰える感じです。最も好きな映画、というのは難しいですが、最近だと「貞子VS伽倻子」という作品が好きです。これは…推したいのですがこの感情は文字で説明しにくいです。きっと呪いにかかったのだと思います。ホラーを兼ねた怪獣映画…予告編を観てください。(注釈:四月段階では別の映画でしたが変えました)

他には文章を書くのも好きです。読む気力はずいぶんまえに失はれました。なんなら書く気力さえ消えてしまいましたが、それでも話を創るのは大好きなので、在学中にきっとなにか書き上げることでしょう。(すごく個人的なパートを一部割愛します)

さて、学問の話で言えば、私は今一番哲学に興味を持っています。元々ウィトゲンシュタインが好きで、あと人生哲学がサルトルとすごく似ていて、彼らを研究したいとの思いからこの専攻に来た、というのがそもそもあります。しかし今は「宗教哲学」というジャンルの存在を知り、そちらへの興味が非常にあります。というか世界の新たな観点を切り開くことにロマンを感じずにはいられません。哲学、素敵です!

…他にはなにがあったでしょうか。ゆるゆると些末なことを書きます。徒然草です。大学で作った友人が皆変人で楽しいです。バイトはお洒落なカフェ以外を許していないのですがいまいち見つかりません。恋愛に現を抜かしてみてえです。御察しの通りレポートが下手です。この自己紹介くらい迷子です人生が。就活をするくらいならば終活を。人生のゴールは未だ見えませんが、そろそろ2000文字のゴールが見えてきました。

終わりに、他の人の自己紹介が知りたいです。だって人より化け物を作ってしまった感がぬぐえません。客観視というものがあまり出来ませんので、今現在どういうものが出来上がっているのかわかりません。アイデンティティの闇鍋です。
これを書いてみて思ったのが、どこを探したって2000文字の自分はいないということでした。厳密に言えば、書き起こして公表しようが困らない自分、社会的な自分はその背景を含めても2000文字程度なのでした。この先、4年間の大学生活の中で、20000文字ですら足りないなにかを経験していこう、そう決意しています。

これにて自己紹介、もとい事故紹介を終わります。ありがとうございました。

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さて、以上の文を提出したところ、教授から「将来が楽しみです」と言われました。

絶対に皮肉だなあ。




梅雨がこんなんやったらよかったなという話

濡れた傘を愛のしるしと思った。雨のにおいは世界のかおりをかき消すけれど、傘の内側は世界から断絶されていたから、僕の鼻腔に触れるのは甘ったるい柔軟剤だけだった。僕たち二人だけが、今、世界にいないのだった。
水たまりを避けようと右に寄れば、彼女に波及し彼女はよろける。
「あ、ごめん」
雨があるから自然、声も大きくなる。
彼女はすんで転ばなかったその体躯を目いっぱいに伸ばす。そうして両手を僕が傘を持つ手にまわし、体重をぶん載せた。世界にあらわになった僕らの関係を雨にドラムロールされる傘が見ることはなかった。
身長差がなくなっていた。きっとこの雨の中、僕を狙うスナイパーは間違って彼女を撃つはずだ。いや、貫かれるのは一緒だろうな。
世界にさらされた二人は、今、一人として世界に認識される。雨を潤滑油に僕たちは溶け合う。口づけと似た何かが耳元に当てられ、ドラムロールは速度を増していった。

「ねえ、お風呂は私から入るよ、兄貴」
彼女は足元の傘を拾い、去った。
ものの見方でだませるのは世界だけだなあと思う。甘酸っぱさのかけらもない何かをたくましい妄想で乗り切るには、世界に比べて、僕は賢すぎたのだ。
ようやく気づいたであろう世界は、さっきまでと変わらずに、僕の全身を濡らし続けている。

毎日君のこと殺す

夢を見たと彼は言った。世界は無関心に橙を見せた。窓際の机に腰かけた私が全てで、隣の彼がそれ以外だった。放課後の教室は静謐の満ちた箱で、私だけの幸せがある。パンドラ、なんて気取った私は口にして、私は彼を口にした。
「夢なんて、そんなの、ゆめよ。」
この愛おしさが箱から溢れないように、静謐をかき混ぜる。物音。私は彼に接吻をする。背徳に興奮して、さらに貪った。カーテンを掠めた私の両手は、彼の側頭部にあてがわれる。彼は身をよじる。私は首に右腕を回して、脚に脚を重ねて、絡みつく。何かに追い立てられる青春に嫌気がさしていた。彼を食べている瞬間、そのひとときだけは、私が追いかけている。いま、きっと誰よりも強い私は、誰よりも強く寄り添いたかった。
「それがうるさいんだ。」
蕩けた彼は目だけに色を灯す。口を歪める。焦点を私に合わせる。
「僕を見てくれよ」
「見ているわ、目の前にいる、あなたを、私は見ている」
「ああ、それだよ、それがいけない。目の前に僕はいるかい。世界における僕は君の目の前にいるかい。君にとって僕はどういう意味を持って」
抑揚のない彼の言葉はいよいよ夢をみているようで、私は彼を追いかけなきゃいけない。
「世界は私で、それ以外はあなたよ。私が目を瞑ると、その時私は世界を見ている。目を開けた時、私はあなただけを見ている。それが愛でしょう」
「じゃあ君はどういう夢を見る?」
彼は未だ夢を見ているようだ。白昼夢は私を貫いて夜に移行して、ただの夢になって、街に溶ける。
「君が目を瞑ったときそこは君の世界だ。君の世界、そこで見る夢は君以外の誰に知られることもない。自由がそこにのみ在って、そう、そこで見た君を僕は殺したんだ。誰にも知られない犯罪、でも君は死んだよ、あっけなく死んだよ。
君は、世界以外さ、呆れるほどに。」
これ以上きいたらいけないと思った私は、彼を殺して、夢から覚めて、もう一度彼の夢を見た。
見事に目が覚めた。